E12 · A
グリーンレイクからのごあいさつ
キャンプ場に着いたばかりのあなたへ
暴雨郵便局へようこそ。この手紙は1990年のグリーンレイクから届きました。思い返しているのは、七〇年代のいくつかの夏です。封筒は森の緑で、キャンプ場の古い手描き看板のような字が、すこし熱心すぎるほどにほほえんでいます。クリーム色の松林と鏡のような湖のあいだに、薄紫の霧がシルクスクリーンでぼんやり不気味に刷られ、隅には錆びた赤のビデオ返却ラベル、小さな蛾の切手が貼られています。
別の湖のほとりで、ソローはこう書きました。「湖は、風景のなかでもっとも美しく、もっとも表情豊かな部分だ。それは大地の目である。その中をのぞきこむ者は、自分自身の本性の深さを測ることになる。」——ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『ウォールデン』(1854年)
グリーンレイクにも、そんな目があって、夏に訪れた人をみな覚えています。ここの物語は少し奇妙で、とてもやさしい。窓の網戸にとまった蛾のように奇妙です。ようこそ。ゆっくり読んで、ゆっくり書いてください。
明かりはついています、扉に鍵はありません
暴雨郵便局
1990年・グリーンレイク