E20 · B
真夜中の水星
真夜中を過ぎても眠れないあなたへ
水星は夜更かしをしません。太陽のそばを離れられず、日が暮れてほどなく沈むので、真夜中の空には現れないのです。水星が来ない夜は、街が自分で灯りをともします。ヘッドライト、看板、バンドが音合わせを始めるときに点く小さな電球の列。
この手紙は、1990年9月ごろのサンフランシスコから届きました。クリーム色の再生紙に、バイク乗りが好むピンストライプの書体で題字が描かれ、コバルトがかった黒の車輪のそばには、海へ下る通りの版画と、色あせた珊瑚色の食堂の看板の切れ端。隅の演奏日の欄には判が押されただけで、日付はありません。ここでは、ライブはいつも今夜なのです。
そんな人たちのために、ある詩人はこう書きました。「われらは音楽をつくる者、そして夢を紡ぐ者」——アーサー・オショーネシー『音楽と月光』(1874年)
ようこそ。真夜中のあとは、手紙にいちばんいい時間です。昼に言い残したことを預けてください。ゆっくりお届けします。あなたが眠ったら、雨がもう一度読んでおきます。
ライブがいつも今夜でありますように
暴雨郵便局
1990年9月ごろ・サンフランシスコ