M10 · B
野営地のかすかな灯
遠くにあの小さな灯を見つけたあなたへ
暴雨郵便局へようこそ。1991年3月、南極。太陽はもう、ずいぶん早く帰っていきます。この封筒は深い海の青で、クリーム色の斜体の題字は雪に刻んだように見えます。雪嶺の細い線のあいだに、窓に暖かな灯のともる小さな観測小屋がぽつんと刷られ、そばにはくすんだ緑の計器の目盛り、縫い目で留めた黄土色の貨物帯があり、紙面には霜の結晶のような空押しの模様が浮かんでいます。
ある詩人は、希望を心にとまる小さな鳥にたとえて、こう書きました。「いちばん冷たい土地でも、いちばん見知らぬ海の上でも、私はそれを聞いた。けれど、どんな窮地でも、それはパンくずひとつ私に求めなかった。」——エミリー・ディキンソン『詩集 第二集』(1891年)
灯は小さくても、多くの人がその灯で温まってきました。どうぞ入って、お掛けください。何も持たなくてもいいですし、何も言わなくてもいいのです。書きたくなったら、ペンと紙は机の上にあります。
灯りをひとつ、残しておきます
暴雨郵便局
1991年3月・南極
追伸 戸口に掛けてあるブーツは乾いています。どうぞ履いてください。