暴雨郵便局

E20 · A

あしたへ走り出す

まだエンジンの温かいあなたへ

暴雨郵便局へようこそ。まず、ひとつ言葉をお貸しします。これを書いた人は、のちにこの街でしばらく暮らしました。「私はどこかへ行くために旅をするのではない。ただ行くために旅をする。旅のために旅をするのだ。大事なのは、動くことだ。」——ロバート・ルイス・スティーヴンソン『旅は驢馬をつれて』(1879年)

その街はサンフランシスコ、時は1990年9月ごろ。霧が湾から急な坂をのぼり、ケーブルカーのベルが夜へ向かって鳴り続けています。封筒は黒に近い青。切り抜いた文字を貼り合わせた英字の見出しは、一文字ずつ気性が違うのに、どれもちゃんと読めます。コピーを重ねて粒の粗くなった乳白色のバイクのホイール、錆色のライブ告知の切れ端、ラベンダー色のコピーのかすれ、隅には街路の碁盤目を刷ったオリーブ色の切手。

ただ、うちの配達人はバイクに乗りません。手紙はゆっくり届きます。言いたいことを考え終えるのに、ちょうどいいくらいに。書きたくなったら、一通どうぞ。雨が預かっておきます。

青信号と、よい霧を

暴雨郵便局

1990年9月ごろ・サンフランシスコ

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